「自社は日本版DBSの対象なのか」「パートや送迎担当者も確認が必要なのか」「12月までに何を整えればよいのか」。こどもと接する事業者から、このような相談が増えています。
日本版DBSの根拠となる法律は、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。一般に「こども性暴力防止法」と呼ばれ、2026年12月25日に施行されます。2026年7月現在は施行前ですが、ガイドライン、申請関係資料、規程例、研修教材、システム利用案内などが順次公表されています。認定対象事業者による認定申請は、施行日の2026年12月25日から開始される予定です。
まず確認するのは「義務」か「認定」か
幼稚園、小中高校、認可保育所、認定こども園、児童養護施設、一定の障害児施設などを設置する「学校設置者等」は、施行後、法律上の措置を講じる義務があります。
一方、認可外保育施設、放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブなどの「民間教育保育等事業者」は、こども家庭庁の認定を受けることで制度の対象となります。認定を受けていない民間事業者に、認定事業者と同じ犯罪事実確認義務が当然に生じるわけではありません。ただし、こどもへの性暴力等を防止し、被害が生じた場合に適切に保護する責務は、認定の有無とは別に意識する必要があります。
同じ法人が認可保育所と学習塾を運営している場合などは、事業ごとに立場が異なることがあります。法人単位で一括判断せず、施設、事業及び運営形態ごとに整理してください。
対象職員は肩書きではなく業務実態で判断
犯罪事実確認の対象は、正社員だけではありません。パート、アルバイト、派遣労働者、業務委託、ボランティアであっても、対象業務に従事する場合は対象になり得ます。
教員、保育士、塾講師、スポーツ指導員などは、対象となる場面が比較的明確です。一方、送迎バスの運転手、事務職員、調理員、清掃員、カメラマンなどは、職種名だけでは判断できません。
こどもに対する支配性、接触の継続性、第三者の目が届きにくい閉鎖性などを踏まえ、実際の勤務内容を確認します。例えば、運転手が日常的にこどもと一対一になる運行を担当する場合と、常に複数の職員が同乗する場合では判断が異なり得ます。状況によって対応が異なります。
施行前に進める7つの準備
第一に、運営する事業を「義務対象」「認定申請を検討する事業」「認定を受けない事業」に分けます。
第二に、職種ではなく業務内容を基準として、現在の職員と採用予定者を洗い出します。雇用形態、派遣元、委託先、勤務場所、こどもと接する頻度、一対一になる可能性まで記録しておくと、対象者の判断に利用できます。
第三に、責任者と権限を決めます。制度全体の責任者、相談対応者、調査担当者、犯罪事実確認記録を閲覧できる者を分け、機微な情報へアクセスできる人数を必要最小限に限定します。
第四に、採用手続を見直します。募集要項、面接時の説明、誓約書、内定通知、雇用契約書、就業規則の内容を整合させます。施行前の採用では、誓約書等による性犯罪前科の申告確認が推奨されています。
ただし、犯罪事実が確認されたからといって、直ちに内定取消しや解雇ができるとは限りません。配置転換やこどもとの接触回避を含め、個別事情と労働法制を踏まえた判断が必要です。就業規則や雇用管理については、社会保険労務士や弁護士への確認も必要になります。
第五に、「不適切な行為」の基準と報告・対応ルールを整えます。私的なSNSでの連絡、二人きりの送迎、密室での指導、写真撮影、更衣、宿泊、身体接触など、事業の実態に即して禁止事項や注意事項を具体化します。
第六に、こどもや保護者が利用しやすい相談窓口を設け、職員研修を計画します。申告があったときは、こどもの安全を優先し、話を否定せず、繰り返し詳細を聞き出さないことが重要です。事業者だけで判断せず、必要に応じて警察、児童相談所、所轄庁、専門家へつなぐ体制も決めておきます。研修は実施して終わりではなく、受講者、実施日、内容を記録して継続的に行います。
第七に、情報管理体制とオンライン申請環境を整えます。閲覧権限、保存場所、操作記録、持出し禁止、漏えい時の報告、廃棄・消去まで規程化します。
オンライン手続にはGビズIDが必要です。認定を予定する事業者は、対象事業を行っていることを証する資料、対象業務の説明資料、児童対象性暴力等対処規程、情報管理規程などの準備を進めます。受付開始を待ってから作成するのではなく、事前に運用できる状態まで整えておくことが重要です。
現職者の確認期限にも注意
新たに対象業務へ就く人は、原則として実際にその業務を行わせる前に犯罪事実確認が必要です。
義務対象事業者の施行時現職者は、施行後3年間に分散して確認します。認定事業者の認定時現職者は、原則として認定の日から1年以内に確認します。対象者数が多い事業者は、申請順序と人員配置を早めに計画する必要があります。
日本版DBSは、犯罪事実確認だけで完結する制度ではありません。日常の安全確保、研修、相談・通報、事案発生時の調査と保護・支援、雇用管理、機微情報の管理を継続して運用する仕組みです。まずは対象業務と対象職員の洗い出しから始めてください。
認定申請を予定する事業者は、規程、運用体制、GビズIDその他の準備を早めに進めることが重要です。対象事業者、対象業務、申請方法及び必要な対応は変更又は追加される場合があるため、準備を進める際は最新のこども家庭庁の公式情報をご確認ください。
ICY行政書士事務所では、大阪市中央区・本町駅徒歩3分の事務所で、日本版DBSの認定申請及び運用準備の相談に対応しています。申請書類や規程の作成は行政書士、就業規則や雇用管理は社会保険労務士、解雇その他の法的紛争は弁護士の領域となるため、必要に応じて各専門家と連携して準備を進めます。
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