「犯罪事実確認の結果は、園長や採用担当者で共有してよいのか」「確認書をPDFで保存してもよいのか」「退職した職員の記録はいつ消すのか」。日本版DBSでは、犯罪事実確認を行うだけでなく、その結果を厳格に管理する体制が求められます。
日本版DBSの根拠法は、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。一般に「こども性暴力防止法」と呼ばれ、2026年12月25日に施行されます。2026年7月現在は施行前ですが、こども家庭庁から情報管理規程のひな型や研修資料が公表されているため、対象事業者は施行前から準備を進める必要があります。
犯罪事実確認の結果は特に慎重な管理が必要
幼稚園、学校、認可保育所などの学校設置者等は、法律上の義務対象です。学習塾、スポーツクラブ、認可外保育施設、放課後児童クラブなどの民間教育保育等事業者は、こども家庭庁の認定を受けた場合に、犯罪事実確認や情報管理措置を行います。
犯罪事実確認書だけでなく、その内容を書き写したメモやデータも「犯罪事実確認記録等」に含まれます。「前科あり」「前科なし」といった記載や、いわゆる「黒」「白」と表現した記録も、確認書の内容を示すため対象となります。
これらの情報が漏えいすると、本人の権利利益や生活に重大な影響を与える可能性があります。そのため、閲覧できる人を必要最小限に限定し、確認書の内容を別の書類やシステムへ記録・保存することは極力避けることが基本です。
情報管理規程は3つの運用方法から考える
義務対象事業者は施行時までに、認定対象事業者は認定申請時までに、情報管理規程を整備する必要があります。
こども家庭庁は、事業者の運用に応じて3種類のひな型を公表しています。
1つ目は、責任者1人だけが「こまもろうシステム」上で確認し、システム外には記録を保存しない方法です。
2つ目は、責任者を含む複数人がシステム上で確認するものの、システム外には保存しない方法です。
3つ目は、複数人が確認し、システム外にも記録を作成・保存する方法です。
人数が少ない事業者であっても、複数の職員に確認結果を広く共有する必要はありません。まずは、システム上だけで確認し、別の記録を作らない運用が可能かを検討することが重要です。
情報管理規程には、管理責任者、取扱担当者、アクセス権限、閲覧・保存・伝達・廃棄の手順、漏えい時の報告体制などを定めます。取扱者への研修も必要です。こども家庭庁は、3つのひな型に対応した情報管理担当者向けの解説動画・資料も公開しています。
紙・パソコン・メールの管理方法も決める
犯罪事実確認記録等を取り扱う端末は業務用とし、私用のスマートフォンやパソコンは使用しないことが求められます。OSやアプリを最新の状態に保ち、不正アクセス対策、アクセス制限、認証設定なども必要です。
紙で保存する場合は、誰でも開けられるキャビネットに保管せず、施錠や鍵の管理を行います。画面ののぞき見、印刷物の置き忘れ、誤送信、USBメモリの紛失なども想定しなければなりません。
事業者内で情報を扱った場合は、確認書を閲覧した日時と担当者、記録を作成した理由、伝達先、保存場所、廃棄日などを取扱記録に残し、責任者が定期的に確認します。自己点検や監査を行い、不備が見つかった場合は規程と運用を見直す必要があります。
犯罪事実確認記録等は、犯罪事実確認や必要な防止措置以外の目的で利用することはできません。職員への注意喚起、採用担当者間の参考資料、別の事業所への人物情報の提供などを目的として、自由に利用・共有できる情報ではありません。
退職後30日以内の廃棄にも注意
犯罪事実確認記録等には、廃棄・消去の期限があります。
職員が離職した場合は、原則として離職等の日から30日を経過する日までに廃棄・消去します。事業者が制度の対象でなくなった場合も、その日から30日以内が基準です。
職員が対象業務を継続している場合は、犯罪事実確認の確認日から5年後が属する年度の末日を基準として、その後30日以内に廃棄・消去します。再確認を行う場合は、新しい確認結果の管理と古い記録の廃棄を連動させる必要があります。
紙は復元できない方法で処分し、電子データも容易に復元できない方法で消去します。一般の機密文書処理会社などへ安易に廃棄を委託すると、禁止される第三者提供に該当するおそれがあるため、事業者自身で適切に処理する必要があります。
漏えいや紛失、第三者への誤送信などが発生した場合は、直ちにこども家庭庁へ報告します。ガイドラインでは、速報の目安として事態を知った時点から3~5日以内が示されています。個人情報保護法に基づく報告や本人通知が別途必要になる場合もあるため、事業者だけで判断せず、早めに専門家へ相談してください。
日本版DBSは、犯罪事実確認書を取得すれば終わる制度ではありません。誰が確認し、どこに保存し、誰に伝え、いつ消去するのかを規程と実際の運用で一致させることが重要です。
まずは、対象業務と対象職員を洗い出したうえで、情報を取り扱う責任者と担当者を決めてください。認定申請を予定する事業者は、情報管理規程、取扱記録、運用体制、GビズIDなどの準備を早めに進める必要があります。
ICY行政書士事務所は、大阪市中央区・本町駅徒歩3分の事務所で、日本版DBSの認定申請及び運用準備の相談に対応しています。認定申請書類、情報管理規程その他の行政書類の作成支援についてご相談いただけます。個人情報漏えいや法的紛争に関する判断が必要な場合は、弁護士その他の専門家と連携して対応することが重要です。