大阪市で簡易宿所の許可を受けてゲストハウスを運営しており、施設と宿泊事業を別会社へ譲渡する予定がある。「買主は旅館業許可を取り直すのか」「売買契約を結んだ後でも許可を引き継げるのか」と迷う方もいるでしょう。
結論として、許可を受けた旅館業の事業全体を譲渡し、譲渡の効力発生前に大阪市長の承継承認を受ければ、譲受人は新規許可を取り直さずに営業者の地位を承継できます。
ただし、譲渡後の申請は認められません。物件の決済日や事業の引渡日だけを先に確定せず、承認日との前後関係を契約段階で調整する必要があります。
この記事は、旅館業法に基づく簡易宿所営業の事業譲渡を扱います。住宅宿泊事業法の新法民泊や国家戦略特区の特区民泊とは手続が異なります。
事業譲渡前に承継承認を受ければ新規許可は不要
2023年12月13日に施行された改正旅館業法により、事業譲渡でも、事前に承認を受けることで営業者の地位を承継できる制度が設けられました。
大阪市の旅館業手続案内でも、事業譲渡の予定があり、譲受人が営業者の地位を承継するときは、旅館業営業者地位承継承認申請書を提出すると案内しています。
承認を受けると、譲受人は従前の営業者の地位を引き継ぎます。そのため、同じ施設・同じ許可内容で事業を継続するのであれば、新規の旅館業許可申請は不要です。
大阪市での承継承認申請手数料は7,400円です。新規許可申請の手数料22,000円とは異なります。
譲渡後の申請や事業の一部だけの譲渡は対象外
最も重要なのは申請時期です。大阪市は、事業譲渡による承継承認申請を譲渡前に行うよう求めており、譲渡後の申請は認めていません。
例えば、10月1日を事業譲渡の効力発生日とするなら、それより前に申請するだけでなく、承継承認まで受けておく必要があります。承認前に買主が宿泊者を受け入れると、買主が無許可営業となるおそれがあります。
また、厚生労働省の事業譲渡に関する通知では、許可された事業の一部だけを譲渡する場合は、この承継制度の対象外としています。複数施設のうち一部のみを譲る場合や、許可範囲を縮小・変更して引き渡す場合は、承継で処理できるかを個別に確認してください。
大規模な増改築などにより、従前の施設との同一性が失われる場合は、新規許可が必要になることもあります。
申請には譲渡を証する書類が必要
大阪市へ提出する主な書類は次のとおりです。
- 旅館業営業者地位承継承認申請書(事業譲渡・様式16)
- 旅館業の譲渡を証する書類
- 譲受人が法人の場合は、定款または寄附行為の写し
- 譲受人が法人の場合は、登記事項証明書
譲渡を証する書類には、譲渡人・譲受人、施設名称と所在地、旅館業を譲渡すること、譲渡の効力発生日を明確に記載します。単に「建物を売買する」と記載した契約書では、旅館業そのものを譲渡する意思が確認できない可能性があります。
申請は窓口への持参のほか、大阪市行政オンラインシステムでも受け付けています。ただし、受付印のある控えや手数料の領収書が必要な場合などはオンライン申請を利用できません。
売買契約を締結する前に手続の順序を決める
事業譲渡は、次の順番で準備すると手戻りを防げます。
- 現在の許可書と申請書控えを確認する
- 未届の構造設備変更や定員変更がないか確認する
- 譲渡対象と効力発生日を契約案へ明記する
- 大阪市保健所へ事前相談する
- 承継承認を受けてから事業譲渡を実行する
- 名称、管理体制、表示内容などの変更手続を行う
承継承認は、建物の所有権、賃借権、消防・建築関係の手続、飲食店営業許可、予約サイトの契約まで自動的に移すものではありません。賃貸物件なら所有者の承諾も確認してください。
ICY行政書士事務所では、大阪市の簡易宿所・旅館業について、事業譲渡に伴う承継承認、譲渡契約案と許可内容の確認、変更届や新規許可の要否整理をご相談いただけます。大阪市中央区・本町駅徒歩1分です。現在の許可書、申請書控え、譲渡契約案、施設図面をご準備のうえ、大阪の民泊申請・届出サポートをご確認ください。

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