「外国人職員も犯罪事実確認の対象になるのか」「海外から採用する場合、来日前に手続できるのか」「パスポートだけで足りるのか」。外国人の保育士、英会話講師、スポーツ指導員などを雇用する事業者では、日本版DBSへの対応を採用手続と併せて考える必要があります。
日本版DBSの根拠となる法律は、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。一般に「こども性暴力防止法」と呼ばれ、2026年12月25日に施行されます。
外国人職員も国籍を理由に対象外にはならない
犯罪事実確認の対象になるかどうかは、国籍ではなく、事業者と担当業務によって判断します。
幼稚園、学校、認可保育所などの「学校設置者等」は法律上の義務対象です。一方、学習塾、スポーツクラブ、認可外保育施設などの民間教育保育等事業者は、こども家庭庁の認定を受けることで制度の対象となります。
そのうえで、外国人職員が教員、保育士、塾講師、英会話講師、スポーツ指導員などの対象業務に従事する場合は、日本人職員と同様に犯罪事実確認が必要となります。外国人であることや、パート、アルバイト、派遣などの雇用形態だけを理由に対象外とはなりません。
反対に、対象事業者で働いていても、担当業務が法律上の対象業務に該当しなければ、当然に確認対象となるわけではありません。事業内容、職員の業務及びこどもとの接し方によって判断が異なります。
犯罪事実確認は内定前にはできない
犯罪事実確認は、応募者全員について自由に行える一般的な身元調査ではありません。犯罪歴に関する情報は機微性が高いため、対象業務に従事することが決定していない段階では確認できないとされています。
そのため、採用内定や配置決定などにより、対象業務へ従事することが決まった後に手続を行います。新たに対象業務へ従事する職員は、原則として従事開始日までに確認を終えなければなりません。
海外から採用する外国人については、海外にいる間でも犯罪事実確認の手続が可能です。こども家庭庁のガイドラインでは、来日後に特定性犯罪前科が判明し、予定していた対象業務に就けなくなる事態を避けるため、可能な限り採用選考時に申告を確認し、出国前に手続を終えることが望ましいとされています。
在留資格認定証明書の申請、査証手続、日本への入国、入社研修、現場配置という日程に、犯罪事実確認の期間も組み込む必要があります。
外国籍職員が準備する情報と書類
犯罪事実確認は、原則として「こまもろうシステム」と呼ばれるオンラインシステムで行います。
事業者はGビズIDを取得して事業者アカウントを作成し、対象職員の氏名、メールアドレス、従事予定日、勤務先、担当業務などを登録します。また、内定通知書や雇用契約書など、職員が対象業務に従事することを証明する書類も必要です。
外国籍の職員本人は、氏名、住所、生年月日、性別などに加え、来日履歴、氏名のカナ表記、重国籍の有無などを入力します。提出書類として、在留カード、住民票、旅券の写し等が求められます。
過去に氏名、国籍、性別又は生年月日の変更がある場合は、その変更を証明する本国の戸籍相当書類も必要です。変更がない場合には、その旨を証明又は誓約する書類が必要となる場合があります。
書類上のアルファベット表記、在留カードの表記、通称名、カナ表記が一致しない場合は、本人確認に時間がかかる可能性があります。採用時には、現在の氏名だけでなく、旧氏名、別名、国籍変更の有無も早めに確認しておくことが重要です。
外国籍の場合は1~2か月を見込む
こども家庭庁のQ&Aでは、犯罪事実確認書の標準処理期間は、日本国籍者が2週間から1か月程度、外国籍者が1か月から2か月程度とされています。書類の不備や氏名変更などの確認が必要な場合は、さらに時間を要する可能性があります。
急な欠員など、やむを得ない事情がある場合には、例外的に従事開始後3か月以内、一定の場合は6か月以内に確認する「いとま特例」が適用されることがあります。
ただし、単に採用手続が遅れたことや、本人への書類案内が遅かったことだけで当然に利用できる制度ではありません。特例を利用する間は、対象職員をこどもと一対一にさせないなどの措置も必要です。
外国人採用では、在留資格の手続だけを基準に入社日を決めず、犯罪事実確認に必要な期間を含めた採用工程を作成してください。
海外の経歴確認と情報管理にも注意
犯罪事実確認では、こども家庭庁が出入国在留管理庁や法務省刑事局などに照会する手続が示されています。外国の行政機関が保有する犯罪記録を一括して取得する制度とはされていないため、日本版DBSの結果だけで、海外を含む全ての経歴が確認されたと扱うことは適切ではありません。
一方、事業者が独自に外国の無犯罪証明書や誓約書を求める場合は、全ての外国人に一律の負担を課すのではなく、その必要性、取得可能性、採用条件との関係を慎重に検討する必要があります。就業規則、採用拒否、内定取消しなどの労務判断は、社会保険労務士又は弁護士へ確認することが適切です。
また、犯罪事実確認書や確認結果は、社内で自由に共有できる情報ではありません。取扱担当者を必要最小限に絞り、閲覧権限、保存方法、持出し制限、廃棄方法などを情報管理規程で定める必要があります。
日本版DBSは犯罪事実確認だけで完結する制度ではありません。外国人職員にも理解できる言語や方法で、こどもとの接し方、私的なSNS連絡の禁止、一対一になる場面の管理、相談・通報ルールなどを周知し、研修を実施することが重要です。
まずは、外国人職員を含む対象業務と対象職員を洗い出し、必要書類の収集時期、在留資格手続、入社日、犯罪事実確認の申請時期を一つの工程表にまとめてください。
ICY行政書士事務所は、大阪市中央区・本町駅徒歩3分の事務所で、日本版DBSの認定申請及び運用準備の相談に対応しています。認定申請書類、対象業務・対象職員の整理、GビズIDや電子申請の準備についてご相談いただけます。
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