大阪市で住宅宿泊事業法に基づく民泊を法人で始めるとき、「スタッフを物件に常駐させるので、住宅宿泊管理業者には委託しなくてもよいのでは」と考えることがあります。
結論からいうと、届出者が法人の場合、従業員が届出住宅に常駐しているだけでは、原則として住宅宿泊管理業者への委託を不要にすることはできません。
観光庁の民泊制度ポータルサイトでも、法人が住宅宿泊事業者である場合、従業員は住宅宿泊事業者そのものではないため、原則として住宅宿泊管理業者への委託が必要と案内されています。
従業員が泊まり込んでも「家主居住型」にはならない
住宅宿泊事業法では、届出住宅に宿泊者がいる間に住宅宿泊事業者が不在となる場合、原則として住宅宿泊管理業務を登録された住宅宿泊管理業者へ委託しなければなりません。
個人が自宅の一部を民泊として使用し、自分自身もその住宅に住んでいる場合には、一定の条件のもとで自ら管理できることがあります。
一方、届出者が株式会社や合同会社などの法人の場合は事情が異なります。
例えば、法人の代表取締役や従業員を物件に常駐させても、その人個人が住宅宿泊事業者になったわけではありません。
観光庁のFAQは、「法人が事業者の場合、従業員が常駐していれば管理業者への委託は不要か」という質問に対して、従業員は住宅宿泊事業者である法人ではないため、原則として委託が必要と明確にしています。
そのため、法人名義で住宅宿泊事業の届出をする場合に、「社員を管理人として置くから家主居住型として届け出る」という整理はできません。
1室だけの民泊でも管理委託が必要になることがある
住宅宿泊管理業者への委託が必要となるのは、居室数が多い場合だけではありません。
住宅宿泊事業者は、原則として次のいずれかに該当すると住宅宿泊管理業務を委託する必要があります。
・届出住宅の居室数が5を超える場合
・宿泊者が滞在している間、住宅宿泊事業者が不在となる場合
つまり、6室以上を運営する場合だけでなく、1室の民泊でも事業者が不在となれば委託が必要になる可能性があります。
大阪市も、住宅宿泊事業者が不在となる場合や居室数が5を超える場合には、住宅宿泊管理業者への委託が必要と案内しています。
なお、個人の住宅宿泊事業者については、日用品の買物など「一時的な不在」は不在として扱われません。観光庁は原則1時間程度、交通事情等のやむを得ない事情がある場合には2時間程度までを目安としています。
しかし、この取扱いは「法人の従業員がそこにいれば法人も在宅している」という意味ではありません。法人で届出を行う場合は、個人の家主居住型と同じ感覚で判断しないことが重要です。
委託する場合は管理業務の一部だけを切り離せない
管理委託が必要となる場合には、住宅宿泊管理業務の全部を、原則として1つの住宅宿泊管理業者へ委託します。
例えば、
「宿泊者名簿は自社で管理する」
「清掃だけ管理会社へ頼む」
「苦情対応は別会社へ依頼する」
というように、法第11条に基づく住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者側で分割して委託することはできません。
観光庁は、一つの住宅宿泊管理業者へ住宅宿泊管理業務の全部を委託する必要があり、複数の管理業者への分割委託や、住宅宿泊事業者が一部を自ら行うことは認められないとしています。委託を受けた住宅宿泊管理業者から一部を再委託することは可能です。
大阪市で住宅宿泊事業の届出を行う際、住宅宿泊管理業者への委託が必要な場合には、管理受託契約の締結時に交付された書面の写しも添付します。
管理会社を選ぶ際は、単に清掃代行を行っている会社かどうかではなく、国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者であるかを確認する必要があります。
法人自身が住宅宿泊管理業者になる方法もある
法人で民泊を運営する場合でも、必ず別会社へ管理を外注しなければならないわけではありません。
住宅宿泊事業者である法人自身が、住宅宿泊管理業者として必要な登録を受け、自ら住宅宿泊管理業務を行う場合には、他の住宅宿泊管理業者への委託は不要です。
複数の民泊物件を継続的に運営する会社などでは、自社で住宅宿泊管理業者の登録を取得する方法を検討する余地があります。
ただし、住宅宿泊事業の届出と住宅宿泊管理業者の登録は別の手続です。
「法人を設立してスタッフを雇えば自社管理できる」というものではなく、住宅宿泊管理業者としての登録要件を満たし、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。
1物件だけを運営する場合と、今後複数物件を展開する場合では、外部の管理業者へ委託する方がよいのか、自社で管理業登録まで行うのかという判断も変わります。
大阪市で法人名義の民泊を始める前に管理方法を決める
大阪市で法人名義による住宅宿泊事業を始める場合は、物件や消防設備だけでなく、届出前に管理体制も決めておく必要があります。
特に確認しておきたいのは、
・住宅宿泊事業の届出者を法人とするのか
・届出住宅の居室数はいくつか
・誰が実際に宿泊者対応を行うのか
・登録住宅宿泊管理業者へ委託するのか
・将来的に自社で住宅宿泊管理業者の登録を検討するのか
という点です。
従業員を現地に配置する予定があっても、それだけで管理委託が不要になるとは判断できません。
住宅宿泊管理業者との契約は届出書類にも関係するため、物件を準備した後ではなく、届出の準備段階で管理方法を整理しておく方が手続を進めやすくなります。
ICY行政書士事務所は、大阪市中央区・本町駅徒歩1分で、住宅宿泊事業の届出をはじめ、民泊・旅館業に関する行政手続の相談に対応しています。
法人で住宅宿泊事業を予定している場合は、法人情報、物件所在地、間取り、居室数、従業員の配置予定、予定している管理方法などをご用意いただければ、住宅宿泊管理業者への委託が必要となるかを含めて手続を整理しやすくなります。

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